SES教育の課題と解決策|現場で通用するエンジニアを育てるには?
- 将平 東
- 6月2日
- 読了時間: 10分
SES企業の研修担当者なら、エンジニアが研修修了後に現場でつまずく姿を目にしたことがあるのではないでしょうか。
教育投資をしても成果につながらない、クライアント先で独り立ちできない新人が増えるといった課題は、多くのSES企業が直面する悩みです。
本記事では、SES企業における教育の本質的な課題と、現場で活躍する人材を育成するための教育アプローチをご紹介します。
SES教育がうまくいかない3つの理由

教育内容と現場ニーズの乖離
SESエンジニア教育において最も根本的な課題は、教育内容と現場ニーズの乖離です。
研修では小規模なサンプルアプリケーションの開発が中心ですが、現場では数十万行に及ぶ既存システムのメンテナンスや改修が求められます。また、基本技術は理解していても、システム全体を俯瞰する視点や、本番環境を意識した実装方法など、現場特有の知識やノウハウが不足しがちです。
このミスマッチにより、「研修を受けていても役に立たない」という評価につながってしまいます。
座学中心の教育モデルによる実践力の不足
従来のSESエンジニア教育では、座学によるインプット中心の教育モデルが主流でした。
概念や理論を理解することは重要ですが、それだけでは実践力は身につきません。特にSESエンジニアには、与えられた仕様書をもとに実装する能力だけでなく、既存システムの構造を理解し、最適な改修方法を考える応用力が求められます。
座学で得た知識を実践に結びつける機会が不足していることが、教育効果を限定的なものにしています。
配属先を考慮しない画一的なカリキュラム
多くのSES企業では、配属先が確定していない段階で共通の教育計画に沿った研修を実施しています。
しかし、インフラ担当なのかアプリケーション開発なのか、金融系なのか製造業なのかによって、必要なスキルセットは大きく異なります。画一的な教育内容では、実際の配属先で必要なスキルと研修内容の間にギャップが生じ、追加の学習負担が発生します。
このミスマッチを解消する個別最適化された教育プランの欠如が、SESエンジニア教育の課題として挙げられます。
現場で活きるSESエンジニアを育てる6つのポイント

明確なスキル定義とレベル設定
効果的なSESエンジニア教育の第一歩は、現場で本当に必要なスキルを明確に定義し、レベル設定することです。
例えば、「Javaが書ける」といった曖昧な目標ではなく、「大規模システムのソースコードを読み、修正箇所を特定できる」「設計書から必要な実装内容を理解し、コーディングできる」など、具体的かつ実務に直結するスキル定義が重要です。
特に、SESエンジニアには技術だけでなく、顧客の業務知識や開発プロセス理解、コミュニケーション能力など、多面的なスキルが求められます。これらを体系的に整理し、段階的に習得できる教育設計が、現場とのギャップを埋める基盤となります。
読解力・修正力を重視したカリキュラム
SESエンジニアの多くは、一からシステムを構築するよりも、既存システムの保守・改修に関わることが多いものです。
そのため、教育カリキュラムもコードを書く力だけでなく、他者が書いたコードを理解し、適切に修正する能力を重視すべきです。具体的には、あえて不完全なコードや設計書を提示し、問題点を発見して修正するような演習を取り入れることで、現場で求められる「読解力」と「修正力」を育成できます。
また、複数の設計パターンやアーキテクチャを比較し、それぞれの利点・欠点を理解することで、様々な現場環境に適応できる応用力も養えます。
実践的なコミュニケーション訓練
SESエンジニアがクライアント先で直面する最大の壁の一つが、適切なコミュニケーションです。
特に「何をどう質問すればよいか分からない」という状況は、スキル成長の大きな障壁となります。効果的な教育設計では、技術スキルと並行して、質問力、報告力、相談力といったコミュニケーションスキルを意識的に訓練する機会を設けるべきです。
例えば、あえて情報が不足した課題を与え、適切な質問を通じて情報を引き出す練習や、日々の学習内容を分かりやすく報告する習慣づけなど、実践的なコミュニケーション訓練が、現場への適応力を高める重要な要素となります。
段階的学習と適応型教育モデル
効果的なSESエンジニア教育には、受講者の理解度や進捗に応じて教育内容を調整する適応型アプローチが求められます。一律のカリキュラムではなく、基礎固めフェーズ、応用力強化フェーズ、実践力養成フェーズなど、段階的な学習設計が効果的です。
各フェーズでは明確な到達目標を設定し、次のステップに進む前に理解を確認するチェックポイントを設けることで、理解不足によるつまずきを防止します。
特にSESエンジニアの場合、将来の配属先に応じた教育内容のカスタマイズも重要です。金融系SIなら業務知識と厳格な開発プロセスの理解、Web系なら最新技術へのキャッチアップ力と高速開発への対応など、現場特性を考慮した設計が即戦力化に直結します。
アウトプット主導型の実践的課題設計
SESエンジニア教育で理論と実務のギャップを埋めるには、アウトプット主導型の課題設計が効果的です。
具体的には、実際の業務に近い複雑さと規模を持つ課題を与え、その解決プロセス全体を体験させることが重要です。 既存システムの機能追加や不具合修正のような実務的な課題を設定し、要件理解、設計、実装、テスト、レビューまでの一連の流れを経験させます。 あえて曖昧な要件や情報不足の状態で課題に取り組ませることで、「情報収集力」や「曖昧さへの対応力」も育成することができるでしょう。
さらに、取り組み内容をチーム内で発表・共有する機会を設けることで、プレゼンテーション能力や説明力など、総合的なビジネススキルの育成にもつながります。
教育効果の測定と改善サイクル
SESエンジニア教育の質を継続的に高めるには、データに基づいた効果測定と改善サイクルの構築が不可欠です。
満足度や修了率といった表面的な指標だけでなく、スキル習得度や現場適応度といった実務的なKPIを設定し、定期的に評価します。 たとえば、課題解決に要した時間、コードの品質、質問の質・頻度、チーム貢献度など多角的にデータを収集・分析することで、教育内容の強化ポイントを明確化できます。
さらに、現場配属後のパフォーマンスを追跡し、それを教育設計にフィードバックする仕組みを整えることで、研修と現場のギャップを縮小し続ける教育体制が実現します。
SES教育の質を引き上げるチーム学習プログラム「CREW」

従来の個別学習型の研修では、学習の継続やスキルの定着に課題がありました。そこで注目されているのが、「チーム学習」スタイルです。
このスタイルを実現するのが、チーム学習型研修プログラム「CREW」。CREWでは、仲間と協力・競争しながら学びを深め、目標達成を目指す環境が整っています。日々の報告やフィードバック、週次の振り返りなどを通じて、報連相・質問力・説明力といった現場力を鍛えることができます。
現場を模したチーム学習環境

CREWでは、キックオフ・Daily・週次振り返り・ニュースタートという4つのセッションを通じて、SES現場に近い環境で学習を進めます。特にDailyセッションでは、Slackなどを活用して学習内容を報告し、メンバー同士が互いの進捗を確認・フィードバックし合います。この報連相の習慣化がSESエンジニアに必要な「現場コミュニケーション力」を自然と育てます。
週次振り返りでは、学習進捗の確認だけでなく、遅延原因の分析や解決策の立案、貢献メンバーの表彰なども行います。これらのプロセスは、SES現場でのプロジェクトマネジメントやレビュー会議を模しており、技術スキルと並行してビジネススキルも養成できる点が特徴です。
SES現場直結型カリキュラム設計

CREWでは、SESエンジニアが現場で直面する課題を想定した1日単位のカリキュラムを提供しています。アウトプット中心の設計により、座学だけでは得られない実践力を強化します。
また、カリキュラムの難易度は徐々に上げていくよう設計されており、初期の達成感から自信を得ながら、より複雑な課題にも挑戦できる構成になっています。
24時間体制の学習サポート

CREWではSlackに連携された生成AIを活用した「AI家庭教師」機能を用意しています。
24時間いつでも質問できるため、夜間や休日の学習でもつまずきを解消できます。また、AIによる個別のアセスメント分析やパーソナライズされた問題・解説の自動生成により、一人ひとりの弱点に合わせた学習も可能です。
専門コーチによる手厚いサポート

CREWでは、特別なトレーニングを通過した優秀なコーチと万全の体制で教育をサポートします。コーチは約20時間の特別なトレーニングを受講・通過した認定者のみが担当します。コーチの役割はチームのリードと学習進捗支援で、学習理解支援は生成AIの活用や技術PMによる専門的な講義・質疑応答で行います。
特別な認定を受けたコーチ陣がサポートしており、約100名が登録しているため、大規模な研修にも対応可能です。
導入事例と実績

株式会社日立アカデミー様では、新卒12名にフルスタックエンジニア研修を2か月間実施しました。従来のe-Learning中心から、チームで助け合い学習・開発するスタイルに教育内容を変更し、コーチがリード・助言する形式を採用しました。
特に前半はe-Learning、後半はチーム開発という構成で、座学で学んだ知識を実践に活かす流れを作ることで、研修と現場のギャップを最小化しました。この結果、技術スキルだけでなく、現場で必要な報連相・質問のスキルが自然と身に付き、早期戦力化を実現しました。
SES企業向け教育研修プログラムの内容
フルスタックエンジニア研修
CREWのフルスタックエンジニア研修では、フロントエンド、バックエンド、データベース、インフラまでを一通り学ぶ教育内容で、Webアプリケーション開発の全体像を把握できます。日立アカデミー様の事例のように、チーム開発を通じて技術スキルと同時にチームでの開発手法も習得できるのが特徴です。
また、新入社員教育では、技術スキルだけでなく、ビジネスマナーや報連相などの基本スキルも身につけられます。どちらの研修プログラムも、チーム学習の特性を活かし、SESエンジニアとして必要な自走力とチームワークを両立させる教育設計になっています。特に、研修と現場のギャップを意識した実践的な課題設定により、現場でも通用する応用力を育成します。
DXリテラシー資格取得コース
SES企業のエンジニアにとって、DXリテラシーは顧客のビジネス課題を理解し、適切なソリューションを提案するために不可欠なスキルです。CREWのDXリテラシー資格取得コースでは、ITパスポート、G検定、DS検定、金融IT検定などの取得を支援する教育内容を提供しています。
特にG検定では100%の合格率を達成し、離脱候補者(目標学習進捗率50%に対して20%未満だった受講者)も全員完走・合格するという実績を上げています。チーム学習の効果が最も発揮される研修プログラムの一つとして、技術的な知識だけでなく、ビジネス価値創出の視点も身につけられる内容となっています。
AWS資格取得・OJT研修の教育内容と現場適応力
クラウド環境の構築・運用スキルは、現代のSESエンジニアにとって必須のスキルです。CREWのAWS関連コースでは、AWS資格取得の支援だけでなく、初級・中級レベルのOJT研修も教育内容に含まれています。
特に、実際の業務で発生する課題をチームで解決する演習を通じて、資格試験では学べない実践的なスキルを習得できます。チーム内での役割分担や報連相の実践により、クライアント先での即戦力としての能力も自然と身につく研修内容となっています。資格取得という明確な目標があることで達成感も得られ、次のステップへのモチベーションにもつながります。
まとめ
SES教育の課題は、現場とのギャップ、画一的な研修、実践力不足にあります。効果的な教育には、実務に即したスキル定義や段階的学習、コミュニケーション訓練が不可欠だと言えるでしょう。
チームで学ぶ「CREW」プログラムのような実践的な仕組みを取り入れることで、研修の成果は大きく変わります。まずは小規模からでも、実務に強いSESエンジニアを育てるための第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。