SES企業の研修ガイド|研修と現場のギャップを埋める方法とは?
- 将平 東
- 6月2日
- 読了時間: 12分
研修で学んだことが現場で活かせない、クライアント先で孤立して早期離職が増加――
SES企業の研修担当者なら、こうした課題に直面していることでしょう。未経験からSESに入社したエンジニアの多くが研修と現場の大きなギャップに戸惑い、挫折を経験しています。
本記事では、SES企業における教育研修の課題と、それを解決する新たな研修アプローチをご紹介します。
SES研修の課題とよくある失敗パターン

研修と現場の乖離が生まれる理由
SES企業における教育研修の最大の課題は、研修内容と実際の現場業務との間に大きな乖離があることです。多くの新人エンジニアは、研修で扱った小規模なアプリケーションと実際の大規模システムのギャップに戸惑います。フレームワークが変わるだけで対応できなくなったり、膨大なファイル数と行数のコードを前に途方に暮れたりする状況は珍しくありません。
また、研修では基本機能の実装に集中しますが、現場では既存システムの改修や複雑な仕様への対応が求められます。そのため、研修の内容を網羅していても、現場では十分なパフォーマンスを発揮できないことがあります。
この現実は「教育研修プログラムは意味がなかった」という評価に繋がってしまいます。
自主学習頼みでは伸びない?研修の落とし穴
従来のe-Learningなどに代表される個人学習型の研修では、自己統制が難しいエンジニアは計画的に学習を進められず、修了率は低い水準にとどまっています。
また、社内研修においても様々な課題があります。多くのSES企業では、研修用資料が更新されず古い知識のまま研修が進められたり、資料を渡されるだけの放置型研修になったりするケースが少なくありません。また、入場時期を優先するあまり、研修カリキュラムが終了する前に現場参画させられることもあります。
さらに、開発/インフラ/運用といった配属先が決まらないまま汎用的な研修が進むのも、実際の業務とのミスマッチが生じる原因になっています。
OJTでは育たない?現場教育の限界
SESエンジニアの育成において重要なのがOJTですが、その質は先輩社員の教育スキルとモチベーションに大きく左右されます。先輩社員は自身の業務をこなしながら教育する必要があり、負担が大きい上に教育に対する見返りが少ないため、積極的に指導する動機づけが弱いという実態があります。
また、多くの先輩社員は自身も体系だった教育を受けてきておらず、本質的な理解に基づいた指導ができないケースも珍しくありません。「研修を受けてきたならこれくらいはできるはず」という前提で接するため、新人の立場に立った教育ができないことも多々あります。
さらに厳しいのは、単独でクライアント先に配属されるケースです。このような場合、他社社員からの教育を受けることになりますが、多くは短期的な案件にフォーカスした教育となり、中長期的なスキル習得につながりにくいのが現状です。
SES研修を成功させる3つのポイント
研修に必要な実務スキルと考え方
効果的なSESエンジニア教育には、技術スキルだけでなく、クライアント先での活躍に直結するスキルセットの構築が不可欠です。具体的には、コードを書く力だけでなく、大規模システムのソースコードを読み解く力、開発ツールの効率的な使用法、既存コードを修正する際の考え方などが含まれます。
また、V字モデルやウォーターフォール開発の各工程の意味を理解し、自分の作業が全体のどこに位置づけられるかを把握できる力も重要です。これにより、現場参画後の不安感が軽減され、適切な報告・相談ができるようになります。
何より重要なのは、学んだ知識を汎用的に活かす力を育てることです。特定のフレームワークに依存せず、基本概念を理解し異なる環境でも応用できる思考力を養成することが、現場とのギャップを埋める鍵となります。
現場対応力を高める研修の設計手法
「インプット70%、アウトプット30%」という従来の研修比率を逆転させ、アウトプット中心の教育設計にすることで実践力が高まります。例えば、概念説明よりも実際のバグ修正やコードレビュー実践に時間を使うことで、現場での即戦力になります。
また、研修内で作成したものをそのまま現場で使えるよう設計することも効果的です。実際の業務を想定した課題を与え、その解決プロセスを通じて技術力だけでなく、問題解決力や質問力も身につけられる設計が理想的です。課題はあえて新人には難しいくらいの内容にし、調査方法や質問の仕方など、技術以外のスキルも学べるように設計します。
研修で育てる「自走力」と「協働力」
SESエンジニアに求められるのは、自ら学び続ける「自走力」と、多様な人材と協働する「チームワーク」の両立です。研修においても、個人の主体性を尊重しながら、チームでの学びを促進する設計が効果的です。
特に重要なのは、失敗から学ぶ経験と成功体験の両方を積ませることです。失敗体験から教訓を得て失敗リスクが低いやり方を学ぶことは重要ですし、成功体験からモチベーションを高めていくことも同様に大切です。成功体験をもとに個人学習に取り組む姿勢が身につけば、教育は成功といえるでしょう。
研修効果を高める「チーム学習」

チーム学習による教育がもたらす規律と競争意識
チーム学習とは、受講生4-5名とコーチ1名でチームを組み、全員の目標達成を目指す教育方法です。従来のe-Learningなどの個人任せなスキル開発とは異なり、チームがもたらす規律と競争意識で学習効果を最大化します。
研修と現場のギャップに一人で悩むのではなく、同じ課題に直面するメンバー同士で解決策を模索することで、多角的な視点が身につきます。また、「自分だけできない」という孤独感を和らげ、「チームのために頑張る」という外発的動機付けも生まれます。この環境は、SESエンジニアが現場で直面する孤独感への対処法も自然と身につける効果があります。
研修における相互フィードバックの価値
チーム学習の大きな強みは、受講者同士の相互フィードバックです。毎日の学習内容を報告し合い、お互いの理解度や進捗状況を確認することで、躓きの早期発見と解決が可能になります。異なる視点からの質問や意見により、理解が深まるとともに、説明力も自然と養われます。
この相互フィードバックの習慣は、クライアント先での報連相スキルにも直結します。「何をどう質問すればいいのか分からない」という新人によくある悩みも、チーム内での質問練習を通じて改善されていきます。また、他者の質問や回答を聞くことで、自分一人では気づかなかった視点を得られる効果も大きいです。
振り返りが育てる、継続学習の研修設計
チーム学習では、日々のフィードバックに加え、週次で振り返りの機会を設けることで、学びを定着させます。この振り返りでは、単なる技術的な復習だけでなく、学習プロセスや協働の質についても話し合います。
また、研修終了後もチームメンバーとのつながりを維持することで、現場配属後の相談相手を確保できます。同期のエンジニア同士のつながりは、先輩に聞きづらい悩みも共有できる貴重なネットワークとなります。これは、SESエンジニアがクライアント先で直面する「孤独」への重要な対策となるのです。
【成功事例】チーム学習型研修の成果
株式会社日立アカデミー様での新卒研修の事例
株式会社日立アカデミー様では、新卒12名にフルスタックエンジニア研修を2か月間実施しました。従来のe-Learning中心から、チームで助け合い学習・開発するスタイルに教育内容を変更し、コーチがリード・助言する形式を採用しました。
特に前半はe-Learning、後半はチーム開発という構成で、座学で学んだ知識を実践に活かす流れを作ることで、研修と現場のギャップを最小化しました。この結果、技術スキルだけでなく、現場で必要な報連相・質問のスキルが自然と身に付き、早期戦力化を実現しました。
現場対応に直結するコミュニケーション研修
この事例では、毎日の学習内容をSlackに報告し、その内容をコーチや技術PMが助言するという教育方法を導入しました。メンバー同士が互いの報告に助言し合うことで、報連相の質が向上しました。
また、「わからない点を他メンバーや技術PMに工夫して質問する」という練習を繰り返すことで、質問力も養われました。これにより、現場配属後に「何を質問していいのか分からない」状態に陥るリスクが大幅に軽減されました。このコミュニケーションスキルは、クライアント先に配属された後も活きる実践的なスキルとして評価されています。
チームマネジメント能力と実務定着を促進する研修内容
チーム学習のもう一つの成果は、チームマネジメント能力の向上です。スキルをチーム間で競争し、メンバーの役割を分担(リーダー・レビュー担当など)することで、自然とリーダーシップやフォロワーシップが身につきました。
また、毎週の活動振り返りをメンバーがリードし、コーチが助言するという形式により、PDCAを回す習慣も定着。チーム開発演習で用いる資料やフレームワークを利用することで、実務への移行もスムーズになりました。この教育内容は、SESエンジニアの現場適応力を大幅に向上させる効果をもたらしました。
ただし、自社でこのような仕組みを一から構築するのは容易ではありません。
特に、専門知識を持ったコーチの確保と育成、効果的なカリキュラムの設計と継続的な改善、チーム学習を促進するための仕組みづくりといった課題があり、これらを社内リソースだけで実現するには、相当な時間とコストがかかります。
そこで、既に確立されたチーム学習のフレームワークを活用することが、効率的かつ効果的な選択肢になります。
チーム学習型教育研修:「CREW」

日立アカデミー様での事例でも採用されたチーム学習のプログラムが「CREW」です。
CREWは「チームで学び、全員が目標を達成する」という理念のもと開発された教育プログラムです。
【CREWの特徴①】仲間と高め合う研修環境

CREWの最大の特徴は、キックオフ・Daily・週次振り返り・ニュースタートという4つの取り組みを通して、仲間と切磋琢磨する教育環境を構築する点にあります。特にDailyでは、個人学習の実施・報告後、メンバーの学習報告に対するチアアップ・助言・フィードバックを行います。
週次振り返りでは学習進捗の確認、遅延の原因特定・解決策の立案、貢献メンバーの賞賛などを実施します。この仕組みにより、一人では継続が難しい学習も高いモチベーションで継続できるようになり、研修と現場のギャップを乗り越える強い意志が育まれます。
【CREWの特徴②】1日単位・実践重視の研修設計

CREWでは、これまでの経験から厳選した教材を組み合わせ、最短で目標達成できるよう1日単位でカリキュラムを分割しています。また、アウトプット中心の設計により、理解の定着と実践力強化を促進します。
毎日講座・テストを受講し、Daily reportで正解率を共有したり、企画やアウトプットを共有してメンバー間の質を競ったりする研修内容により、実務で必要なアウトプット力が自然と身についていきます。この教育方法は、SESエンジニアの実践的スキル習得に大きく貢献し、現場とのギャップを埋める効果があります。
【CREWの特徴③】生成AIで研修を最適化

CREWでは、目標達成のために生成AIをフル活用した教育環境を用意しています。Slackに連携されたGPTが「AI家庭教師」として24時間質問対応するため、講師が稼働していない時間でも相談し放題です。
また、キックオフ時にアセスメントをGPTで分析したり、理解度を深めるためのパーソナライズされた問題や解説を自動生成したりと、最新テクノロジーを活用して学習効率を高めています。これにより、SESエンジニアの自己解決能力も自然と向上し、クライアント先での自走力強化につながります。
【CREWの特徴④】専門コーチによる手厚いサポート

CREWでは、特別なトレーニングを通過した優秀なコーチと万全の体制で教育をサポートします。コーチは約20時間の特別なトレーニングを受講・通過した認定者のみが担当します。コーチの役割はチームのリードと学習進捗支援で、学習理解支援は生成AIの活用や技術PMによる専門的な講義・質疑応答で行います。
特別な認定を受けたコーチ陣がサポートしており、約100名が登録しているため、大規模な研修にも対応可能です。
SES企業向け教育研修プログラムの内容
フルスタックエンジニア研修と新入社員教育の特徴
CREWのフルスタックエンジニア研修では、フロントエンド、バックエンド、データベース、インフラまでを一通り学ぶ教育内容で、Webアプリケーション開発の全体像を把握できます。日立アカデミー様の事例のように、チーム開発を通じて技術スキルと同時にチームでの開発手法も習得できるのが特徴です。
また、新入社員教育では、技術スキルだけでなく、ビジネスマナーや報連相などの基本スキルも身につけられます。どちらの研修プログラムも、チーム学習の特性を活かし、SESエンジニアとして必要な自走力とチームワークを両立させる教育設計になっています。特に、研修と現場のギャップを意識した実践的な課題設定により、現場でも通用する応用力を育成します。
DXリテラシー資格取得コースの研修内容と効果
SES企業のエンジニアにとって、DXリテラシーは顧客のビジネス課題を理解し、適切なソリューションを提案するために不可欠なスキルです。CREWのDXリテラシー資格取得コースでは、ITパスポート、G検定、DS検定、金融IT検定などの取得を支援する教育内容を提供しています。
特にG検定では100%の合格率を達成し、離脱候補者(目標学習進捗率50%に対して20%未満だった受講者)も全員完走・合格するという実績を上げています。チーム学習の効果が最も発揮される研修プログラムの一つとして、技術的な知識だけでなく、ビジネス価値創出の視点も身につけられる内容となっています。
AWS資格取得・OJT研修の教育内容と現場適応力
クラウド環境の構築・運用スキルは、現代のSESエンジニアにとって必須のスキルです。CREWのAWS関連コースでは、AWS資格取得の支援だけでなく、初級・中級レベルのOJT研修も教育内容に含まれています。
特に、実際の業務で発生する課題をチームで解決する演習を通じて、資格試験では学べない実践的なスキルを習得できます。チーム内での役割分担や報連相の実践により、クライアント先での即戦力としての能力も自然と身につく研修内容となっています。資格取得という明確な目標があることで達成感も得られ、次のステップへのモチベーションにもつながります。
まとめ
研修と現場のギャップに苦しむ多くのエンジニアを見てきた経験から言えるのは、技術スキルだけでなく、報連相・質問力・自走力といった、クライアント先で真に求められるスキルを身につける研修が必要だということです。
CREWのチーム学習型研修プログラムは、従来の教育課題を解決し、SESビジネスの競争力強化につながります。まずは少人数からでも新しい研修内容を試してみてはいかがでしょうか。